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世界中のヘビ約3000種の中で,毒液や毒性の唾液分泌物があるためヒトにとって危険なヘビは,世界では約15%,米国では20%のみである( 咬傷と刺傷: 地域別重要毒ヘビ一覧表 1: を参照)。アラスカ州,メーン州,ハワイ州を除く米国全州において,少なくとも1種類の毒ヘビが生息している。ほとんどの毒ヘビは全てマムシ亜科(頭部両側に熱感知器官である穴[pit]状のくぼみがあることから"pit viper"と呼ばれる)であり,ガラガラヘビ,アメリカマムシ,ヌママムシで構成される。毒ヘビによる咬傷は毎年7000〜8000件発生する。咬傷の大半,および死亡例のほぼ全例がガラガラヘビによるものである。その他の毒ヘビ咬傷の大部分は,アメリカマムシ,およびさらに少ないがヌママムシによる。サンゴヘビ(コブラ科)および(動物園,学校,ヘビ園,プロ・アマチュアの収集物における)輸入種は,全ヘビ咬傷の1%未満を占める。受傷者のほとんどは17歳から27歳までの男性で,そのうち50%は酩酊しており,ヘビに故意に触れたり危害を加えた経緯がある。ほとんどの咬傷は上肢に生じる。死亡例は毎年5,6例発生するのみである。死亡リスクには,極度の高齢,(野生で遭遇するのではなく)捕獲されているヘビを扱うこと,治 療の遅れ,過少治療などがある。
表 1 | ||||||||||||||||||||||
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病態生理
ヘビ毒は蛋白を主とした複雑な混合物であり,酵素活性をもつ。ヘビ毒の致死的毒性には酵素も重要な役割を果たすが,より低分子量である特定のポリペプチドに起因する場合もある。ヘビ毒成分の大部分は多数の生理学的受容体に結合するらしく,ヘビ毒をある特定の組織に対する毒(例,神経毒,血液毒,心臓毒,筋毒)として分類しようとすると,誤解を招く恐れがあり,臨床診断の過誤に陥る可能性がある。
北米における大部分のマムシ類の毒は,局所作用および凝固障害などの全身作用をもたらす。これらの作用の結果として,局所損傷,血管障害,溶血,播種性血管内凝固(DIC)様(脱線維素)症候群,肺・心臓・腎臓・神経の障害などが起こる。ヘビ毒は毛細血管膜の透過性を変化させ,これにより電解質,アルブミン,赤血球が血管壁を通り毒物注入部位へと滲出する。この過程は肺,心筋,腎臓,腹膜,まれではあるが中枢神経系において起こりうる。最初に,浮腫,低アルブミン血症,血液濃縮が起こる。その後,血液および体液が微小循環にうっ滞し,低血圧および乳酸血症,ショック,重症例では多臓器不全を引き起こす。有効循環血液量が減少し,心不全および腎不全の一因となることがある。ガラガラヘビによる� ��度の咬傷では,臨床上重大な血小板減少(血小板数が20,000/μL未満)が一般的であり,単独または他の凝固障害と併発して生じる。ヘビ毒誘発性血管内凝固は脱線維素症候群を引き起こすことがあり,その結果,咬傷部位および静脈穿刺部位からの特発出血に加え,鼻出血,歯肉出血,吐血,血尿,内出血が起こる。腎不全は,重度低血圧,溶血,横紋筋融解,ヘビ毒の腎毒性作用,DIC様症候群に起因する場合がある。ガラガラヘビによる重度の咬傷では,蛋白尿,ヘモグロビン尿,ミオグロビン尿を来す場合がある。北米における大部分のマムシ類の毒は,神経筋伝達に及ぼす変化が非常にわずかであるが,モハビガラガラヘビおよびトウブダイヤガラガラヘビの毒は例外であり,重篤な神経障害を引き起こしうる。
サンゴヘビの毒は主として神経毒成分を含み,シナプス前神経筋遮断を引き起こし,場合によっては呼吸麻痺をもたらす。顕著な蛋白分解酵素活性を示さないため,咬傷部位の症状と徴候はわずかである。
症状と徴候
ヘビによる咬傷は,毒ヘビであれ無毒のヘビであれ,通常は恐怖をもたらし,しばしば自律神経症状(例,悪心,嘔吐,頻脈,下痢,発汗)を伴い,毒物注入による全身症状との区別が難しい場合がある。
無毒のヘビによる咬傷が原因となる症状と徴候は局所のみであり,通常は咬傷部位の痛みとヘビ上顎による2〜4列のひっかき傷である。
毒物注入の症状と徴候は,局所性,全身性,凝固障害性,またはそれらの複合である場合があり,毒物注入の程度とヘビの種類によって左右される。
マムシ類: マムシ類による咬傷の約25%は乾性(毒物が注入されない)であり,全身性の症状や徴候は現れない。局所徴候は,単独もしくは複数の牙痕およびひっかき傷である。毒物注入が起きた場合,通常は30〜60分以内に,咬傷部位および周辺組織の浮腫・紅斑や斑状出血が生じる。浮腫は急速に進行し,数時間以内に患肢全体に及ぶことがある。リンパ管炎および所属リンパ節の腫大や圧痛が起こり,咬傷部が熱をもつ。中等度または重度の毒物注入(後述の咬傷と刺傷: 診断を参照 )では斑状出血が一般的であり,3〜6時間以内に咬傷部位またはその周辺に出現する。斑状出血は,トウブダイヤガラガラヘビおよびセイブダイヤガラガラヘビ;ヌママムシ;プレーリーガラガラヘビ,パシフィックガラガラヘビ,ヨコシマガラガラヘビによる咬傷後に最も重症となる。アメリカマムシおよびモハビガラガラヘビによる咬傷後の斑状出血は,あまり一般的ではない。咬傷周辺の皮膚は緊張し,退色してみえる。漿液性,出血性,またはその両方の性質をもつ水疱が,通常は8時間以内に咬傷部位に出現する。北米におけるガラガラヘビの毒物注入による浮腫は通常,真皮組織および皮下組織に限局するが,まれに重度の毒物注入により筋膜下組織に浮腫ができ,コンパートメント症候群(体区画圧が1時間にわたって30mmHg以上 と定義される)を引き起こす。ガラガラヘビの毒物注入後には,咬傷部位周辺の壊死が一般的である。軟組織に対する毒作用の大部分は2〜4日間で最大となる。
逆に曲がった子宮と陣痛?
毒物注入の全身症状は,悪心,嘔吐,発汗,不安,錯乱,特発出血,発熱,低血圧,ショックなどである。ガラガラヘビによる咬傷の受傷者の中には,ゴムやハッカ,金属のような味覚が口内に現れる者もいる。北米における大部分のマムシ類の毒は,全身性脱力や全身性知覚異常,筋攣縮などの軽微な神経筋伝達の変化をもたらす。精神状態が変化する患者もいる。モハビガラガラヘビおよびトウブダイヤガラガラヘビの毒は,呼吸抑制などの重篤な神経障害を引き起こすことがある。ガラガラヘビの毒物注入により,血小板減少,PT(INRにより測定する)や活性化PTTの延長,低フィブリノーゲン血症,フィブリン分解産物の増加,またはこれらの障害の複合といった,DIC様(脱線維素)症候群に類似した様々な凝固異常が生じる場合が� �る。血小板減少は通常最初に発現し,無症状のこともあるが,複合型凝固障害があれば特発出血を引き起こす。凝固障害のある受傷者は,典型的には咬傷部位や粘膜から出血し,吐血,血便,血尿,これらの複合がある。ヘマトクリットの上昇は,血液濃縮に続発する初期所見である。その後,補液とDIC様症候群による血液損失の結果,ヘマトクリットは低下する。重症例では,溶血によりヘマトクリットが急激に降下することがある。
サンゴヘビ類: 痛みおよび腫脹はないかごくわずかであり,しばしば一過性である。局所の症状と徴候がないので毒液注入のない咬傷と誤認する場合があり,受傷者と医師の双方が誤って安心感を抱いてしまう。患肢の脱力は,数時間以内に顕著になる。全身性神経筋症状は12時間ほど遅れて現れる場合があり,脱力および嗜眠;多幸感や眠気などの感覚変化;眼瞼下垂,複視,かすみ目,構音障害,嚥下障害などを起こす脳神経麻痺;唾液分泌の増加;筋弛緩;呼吸困難または呼吸不全などである。いったんヘビ毒の神経毒性作用が発現すれば改善は困難であり,3〜6日間続くことがある。患者は治療されないと呼吸不全で死に至る場合がある。人工呼吸が必要となることがある。
診断
確定診断には,毒物注入による臨床徴候とともに,ヘビを明確に同定する必要がある。病歴には,咬まれた時間,ヘビに関する説明,現場で受けた治療の種類,基礎疾患,ウマまたはヒツジ製品に対するアレルギー,毒ヘビ咬傷歴およびその治療歴などを含めるべきである。完全な身体診察を実施するべきであり,患肢の咬傷部位近位および遠位の,ベースライン周径の測定を含める。
患者はしばしばヘビの詳細な外観を思い出せないことがある;しかし,マムシ類は矢尻状の頭部,楕円形の瞳孔,目と鼻の間にある熱を感知する穴(pit),格納式の牙,尾の下側にある肛板から伸びる尾下板が一列であることで,無毒ヘビとは異なる。
米国のサンゴヘビには円形の瞳孔と黒色の鼻があるが,顔面に穴(pit)がない。サンゴヘビは丸い,すなわち葉巻上の頭部であり,赤,黄色(クリーム色),黒の縞が交互にあり,よくみられ毒のないスカーレットキングスネークとしばしば患者が間違える原因になっているが,後者では赤,黒,黄色の縞が交互にある("赤に黄色なら人殺す","赤に黒なら毒はなし")。サンゴヘビには固定された短い牙があり,連続して咬む動きによって毒物を注入する。牙痕はサンゴヘビを暗示するが,決定するものではなく,ガラガラヘビが1カ所か2カ所の牙痕か他の歯の痕跡を残す一方で,無毒ヘビによる咬傷では通常,浅い歯の痕跡が複数みられる。しかし,ヘビは複数回攻撃したり咬んだりする場合があるため,歯の痕跡と咬� �部位の数は様々である。
マムシ類では,毒物注入の症状と徴候が8時間経過しても発現しない場合に乾性咬傷と診断される。
毒物注入の程度は,ヘビの大きさと種類(ガラガラヘビ>ヌママムシ>アメリカマムシ);注入された毒物量;咬まれた回数;咬傷の位置と深さ(例,頭部および体幹の咬傷では四肢の咬傷よりも毒物注入が重度となる傾向がある);受傷者の年齢,体の大きさ,健康状態;治療を受けるまでの時間;受傷者のヘビ毒に対する感受性(反応)による。
毒物注入の重症度は,局所所見,全身症状と全身徴候,凝固パラメータ,臨床検査結果のうち最も重度なものに基づき,軽度・中等度・重度に判定でき(咬傷と刺傷: マムシ類による毒物注入の重症度表 2: を参照)。重症度の判定は,最も重度の症状,徴候,検査所見によって決定すべきである。
表 2 | ||||||||||||
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毒物注入は軽度から重度へと急速に進行することがあり,継続的に再評価する必要がある。
治療
一般的方法: 現場では,受傷者はヘビの攻撃範囲外へ自力で移動するか,他者に移動させてもらうべきである。受傷者を安静にして元気づけ,温かく保ち早急に最寄りの医療機関に搬送するべきである。患肢は心臓直下の機能肢位にゆるく固定し,指輪,腕時計,締めつける衣類を全て外すべきである。毒の体内吸収を遅らせるための圧迫固定法(例,患肢周囲にクレープ包帯を巻くことによる方法)はサンゴヘビによる咬傷では適切であるが,米国では大部分の咬傷がマムシ類によるものであり,推奨されない;圧迫固定法は動脈不全や壊死の原因となる場合がある。最初に対応した者は,一刻も早く最寄りの医療機関に受傷者を搬送し,その間に気道を確保し呼吸を保持し,酸素を投与して,受傷していない肢に静注経路を確保するべきである。そ� ��他の院外診療行為(例,止血帯,局所用製剤,切開または未切開の状態での口や装置を用いた吸引,低温療法,電気ショック)は利点が証明されておらず,有害となり適切な治療を遅らせる可能性がある。しかし,すでに止血帯が施されている場合は,四肢を脅かす虚血を引き起こさないかぎり,患者が病院へ搬送され,毒物注入が除外されるまで,または最終的治療が開始されるまでは,そのまま残しておくべきである。
救急治療部では,まず気道,呼吸,循環を確立または維持することに主眼をおくべきである。患肢の周径測定は,局所の進行がおさまるまで,到着時および以降15〜20分おきに実施するべきであり,局所毒物注入の進行を評価するには,局所浮腫辺縁の輪郭を消えないペンで描いておくことも有用である。ごく軽度の咬傷を除き,マムシ類による咬傷の全てにおいて,電解質,BUN,クレアチニンの測定に加えて,ベースラインCBC(血小板を含む),凝固プロフィール(例,PT,PTT,フィブリノーゲン),フィブリン分解産物,尿検査を要する。中等度から重度の毒物注入では,患者の血液型判定および交差適合試験;ECGおよび胸部X線;通常はじめの12時間は4時間ごと,以降毎日または患者の状態に応じて実施するCK検査,などが必� ��となる。サンゴヘビの咬傷では神経毒作用があるため,酸素飽和度のモニタリングと,ベースラインおよび連続肺機能検査(例,ピークフロー,肺活量)が必要である。
マムシ類による受傷者は全て,救急診療部またはICUにおいて,少なくとも8時間は注意深く観察するべきである。8時間後に毒物注入の徴候がない患者は,創傷を適切に処置(咬傷と刺傷: 補助的手段を参照 )した後に帰宅させてもよい。サンゴヘビによる咬傷の受傷者は,呼吸麻痺が発現した場合,集中治療環境下で少なくとも12時間は監視するべきである。初期に軽度と評価された毒物注入が,数時間で重度へと進行することがある。緊密なモニタリングと適切な治療が実施されなければ,患者は死亡しうる。
治療は,呼吸支援,不安抑制または鎮静を目的としたベンゾジアゼピン,鎮痛を目的としたオピオイド類,ショックに対する補液および血圧支援などである。凝固障害の大部分は十分量の中和抗毒素に反応する。輸血(例,濃厚赤血球,新鮮凍結血漿,クリオプレシピテート,血小板)が必要な場合があるが,患者に中和抗毒素を適量投与するまでは実施するべきではない。開口障害,喉頭痙攣,唾液分泌過剰がある場合は,気管切開が必要となることがある。
抗毒素: 中等度から重度の毒物注入を受けた患者では,積極的支持療法に加え,抗毒素が治療の要である。
マムシ類による毒物注入に対しては,ウマ由来抗毒素のほとんどがヒツジ由来抗ガラガラヘビ多価免疫FAb抗毒素(マムシ類の毒を接種したヒツジから得たIgGのFAbフラグメントを精製したもの)に置き換えられてきた。ウマ由来抗毒素の有効性は時間および用量依存性である;毒物注入から4時間以内が最も有効であり,12時間後では効果が弱いが,24時間後でも凝固障害が改善されることがある。最近の症例報告によると,ヒツジ由来抗ガラガラヘビ多価免疫FAbは時間や用量に影響されず,毒物注入から24時間後に開始しても有効である可能性があることが示唆されている。ヒツジ由来抗マムシ類多価免疫FAbはウマ由来抗毒素より安全でもあるが,それでも急性反応(皮膚反応やアナフィラキシー反応)および遅延型過敏反応(血清病)を引き 起こす可能性がある。血清病は,FAb製剤を投与してから1〜3週間後に,最大16%の患者に生じる。初回量として,溶解したヒツジ由来抗マムシ類多価FAb 4〜6バイアルを250mLの生理食塩水で希釈し,最初の10分間は20〜50mL/時で緩徐に投与し,有害反応が起こらなければ,次の1時間で残りを投与する;症状の抑制,凝固障害の改善,生理的パラメータの補正を目的として,必要に応じ同量を2回まで投与できる。小児でも,(例,体重や体の大きさによって)用量を減らさない。患肢の中で咬傷から近位にある3点の周径を測定し,拡大していく浮腫の境界を15〜30分ごとに測定すれば,追加投与が必要であるか決定する指針となりうる。症状が抑制されたら,四肢の腫脹や毒によるその他の作用の再発を防ぐため,2バイアルの用量を生理食塩水250mLに希釈して6,12,18時間後に投与する。
ヌママムシによる毒物注入では,さらに少用量でよい場合がある。アメリカマムシやピグミーガラガラヘビによる咬傷では通常抗毒素は不要だが,小児,高齢者,基礎疾患(例,糖尿病,冠動脈疾患)のある患者はこの限りでない。
サンゴヘビによる毒物注入では,ウマ由来多価抗サンゴヘビ抗毒素を,毒物注入を疑う段階では5バイアル,症状が現れた場合には追加して10〜15バイアルの用量で投与する。用量は,成人も小児も同様である。
ウマ由来抗毒素が必要な症例においては,ウマ血清感受性皮膚試験について議論の余地がある。皮膚試験は,急性過敏性反応の発現を予測する効果はなく,陰性結果が即時型過敏反応を完全に除外するわけではない。しかし皮膚試験が陽性であり,毒物注入が命にかかわるか,四肢を脅かすと考えられる場合ならば,アナフィラキシー治療ができる救命救急診療体制下で,H1ブロッカーおよびH2ブロッカーを抗毒素投与前に投与すべきである。 抗毒素に対する早期アナフィラキシー様反応は一般的であり,通常は急速すぎる注入が原因である;治療は,注入の一時中断と,重症度に応じたエピネフリン,H1ブロッカー,H2ブロッカー,静脈内輸液による治療である。通常は,抗毒素をさらに希釈して注入速度を遅くすれば,投与を再開できる。 血清病は一般的であり,治療から7〜21日後に,発熱,発疹,倦怠感,蕁麻疹,関節痛,リンパ節症が発現する(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 症状と徴候を参照 )。治療は,H1ブロッカー,および副腎皮質ホルモン剤の漸減療法である。
補助的手段: 過去の接種歴から示唆された場合(嫌気性菌: 破傷風に対する免疫化のガイドラインを参照 表 1: ),患者は破傷風予防(トキソイド,場合によってはIg)を受けるべきである。ヘビ咬傷が感染創となることはまれであり,感染の臨床徴候がある場合にのみ抗生物質が適応となる。必要であれば,選択肢は第1世代セファロスポリン(例,経口セファレキシン,静注セファゾリン)や広域スペクトルペニシリン(例,経口アモキシシリン/クラブラン酸,静注アンピシリン/スルバクタム)である。その後の抗生物質の選択は,創傷培養物の培養試駅および感受性試験の結果に基づくべきである。
咬傷創は他の穿刺創と同様に,創傷部を洗浄し被覆して治療するべきである。四肢の咬傷に対しては,患肢を機能肢位に副子固定して挙上する。創傷は毎日診察して洗浄し,無菌包帯で覆うべきである。受傷3〜10日目の間に,小疱,血性小胞,表層壊死の外科的デブリドマンを行うべきであり,段階的に実施しなければならない場合がある。創傷の壊死組織切除と理学療法に対しては,無菌の渦巻浴が適応となることがある。コンパートメント症候群に対する筋膜切開が必要となることはまれだが,体区画圧が,1時間で30mmHg以上まで上昇した場合;重度血管損傷を引き起こす場合;患肢の挙上,マンニトール1〜2g/kgの静注,抗毒素に反応しない場合には選択肢となる。咬まれてから2日以内に,関節動作,筋力,知覚,外径を評価すべきで� �る。拘縮を防ぐため,固定を解いて頻繁に軽度運動の時間をとり,受動運動から能動運動へと発展させる。
米国外来種のヘビによるものを含め,ヘビ咬傷に対処する場合,地域の中毒事故管理センターや動物園は優れた情報源である。これらの施設では,ヘビ咬傷の治療について訓練された医師の一覧表や,全米動物園水族館協会(American Zoo and Aquarium Association)および全米中毒事故管理センター協会(American Association of Poison Control Center)が発行し定期的に更新している,Antivenin Index(抗毒素一覧)を保管しており,これには米国在来種の全ての毒ヘビおよび米国外来種の大部の毒ヘビについて入手可能な抗毒素バイアルの保管場所と数が登録されている。米国の電話相談サービスは800-222-1222から利用できる。(訳注:日本では日本中毒情報センター[www.j-poison-ic.or.jp/]が情報を提供している。医療機関向けの緊急相談電話サービスは,大阪中毒110番072-726-9923[365日24時間対応],つくば中毒110番029-851-9999[365日9時21時対応],いずれも1件2000円。)
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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